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蛮の狩猟戦記tri                        『新たなる一太刀』

蛮の狩猟戦記tri                        『新たなる一太刀』

第1章、第2章、第3章、第4章

第1章「第一歩」

ギィ・・・

酒場の扉が軋みながら開いた、酒場には既に何名かが酒を煽っていた
酒場で飲んでいた者達は、一度扉の方を向いたものの
また酒の入ったジョッキを傾けていた。

青年は酒場を見回し、カウンターの向かいで肘を付いている女性の所へと歩き出した。
女性は青年の姿に気付き、姿勢を正した

「いらっしゃい、クエストの依頼かしら?」

「いや、ハンター登録をしたいんだけど・・・」

青年がポーチから羊皮紙を取り出そうとした時

「ギルドマスター、登録の手続きお願いしまーす!!」

青年は反射的に声が向けられた方を向いた、ヨボヨボに老いた老人がキセルを吹かしている

「ん?あぁ、おまえさん、こっちへ来なされ」

(こんなジジイがギルドマスター・・・

見たところ竜人族の老人で、青年の腰より背が低そうだ

「ふむ・・・ランポスヘルムにクックメイル、腕は無しと・・・・クックフォールドにランポスグリーヴのぅ・・・・」

ギルドマスターと呼ばれた老人が、青年の装備を上から下へと視線を走らせた

「紹介状はあるかの?」

青年はポーチから羊皮紙を取り出して、老人に手渡した。

「ふむふむ・・・イヤンクック3体、ドスガレオス1体か・・」

老人は羊皮紙を仕舞い、変わりに別の羊皮紙とペンを取り出した。

「名前、年齢、性別、得意とする武器を書いてそこにいる女性に渡すのじゃ。後は任せたぞ、ティナ」

言われたとおりに羊皮紙に書き込み、ティナと呼ばれた先ほどの女性に差し出した。

「はい、預かりますね。・・・・これで登録は完了よ、これから頑張ってね、ロン・バースディ君」

青年の名はロン、新しくハンターとしての第一歩を歩むべく街へ来た、新米ハンターである



第2章「クエスト受注」


村で活躍を認められ、街へと来た青年「ロン・バースディ」

齢16歳でイャンクックの狩猟を成功させ、それからわずか半月でドスガレオスをも討ち果たした。

そんな彼が夢にまで見た街、ドンドルマへ行くことを許され、村長から紹介状を貰い街へと来た。

彼はギルドへの登録を済ませ、街での新たなハンター生活を送るのだが・・・・



「で、これからどうするの?」

受付嬢のティナと呼ばれた女性が聞いてきた。

「どうするって・・・・・狩りには今すぐ行けないのか?」

太刀と呼ばれる自分の体を優に超える長刀「骨刀【狼牙】」を背にした青年

ロンが聞いた

「ここ街での依頼は村で受ける依頼より数も多い上に過酷な物が多数を占めるの、そんな中での狩猟は仲間の力無しにこなして行くのはほぼ不可能・・・だからこそ街ではパーティーを組んでの狩猟が基本となるわ、まぁ一人で飛竜を狩る人もいるけどね。」

飛竜、この世界において生の象徴とも言える生物・・・

ハンターは主に彼らを狩る事を生業としているが、彼らの存在は正に絶対的と言える・・・

代表的な飛竜として、リオレイアが上げられる、この飛竜は陸の女王と呼ばれており

彼女の狩猟を成す者は、一人前と呼ばれるハンターの登竜門的な飛竜である

しかし彼女を狩ることは至極困難で、毎年何名もの新人がこの女王の前にひれ伏し、散って行った・・・

「飛竜か・・・・まだ見た事無いんだよな・・・」

少し手のひらが汗ばんで来た・・・・・

「でも、これならあなた一人でも大丈夫かな?はい。」

そう言ってティナが差し出した依頼書を見た。

「特産キノコ8個の納品」

新米中の新米、つまりはハンター最初の仕事は特産キノコ納品クエストから始まる

「なっ・・・ちょっとナメ過ぎじゃ無いか!?」

ロンが食って掛かった、村で実力者だと認められた者の初陣がキノコ狩り・・・・屈辱だった。

「そう言わないの、ランポスだって出てくるし、街での狩猟をこなして行くには必ず通らなければならない道なんだから。」

「俺がドスランポス一匹狩れないとでも思ってるのか!?ふざけ・・・・」

「ふざけるな、と口にした者の末路がどんなのか聞きたい?」

ロンは口を閉ざした。

「・・・・分かったよ、来たばかりで良い依頼が回るとは思ってなかったし、それに・・・・・」

ロンはクエストの依頼書にサインを走らせる

「初心に戻るのも悪くないからね。」

ティナがクスクスと笑いながら依頼書を確認した。

「はい、ロン・バースディさん、受付が完了しました。右手の奥よりクエスト出発となります、頑張ってね。」

街に来て初めての狩猟が始まった。



第3章


「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

ロンは密林の中を走っていた・・・

身を隠せそうな草陰を見つけるとそこへ身を隠した・・・・

全身が恐怖一色に支配されていた・・・・

「なんなんだよアイツは・・・・」

それは今から一刻ほど前、クエスト「特産キノコ8個の納品」を始めてしばらくしてからだった。



「っち、もう無いのか・・・・」

特産キノコがある場所を採取していたが、とうとうどこにも無くなってしまった

ただ一箇所・・・・エリア6を除いてだが・・・・

「あそこだけは行きたくなかったな…」

今は温暖期の昼、エリア6は洞窟状になっていて、上には大きな穴がポッカリ開いている。

もともとエリア6は飛竜種の巣となっており、そこには食べ残しを狙うランポスが日中うろうろしているのだ

「モスから剥ぎ取るって言う手も・・・・・いや、やめとこう。」

特産キノコは何も地に生えているだけではない、モスと呼ばれる小型動物の体からも生えている事がある

「下手に狩って肉食竜なんか寄って来たら面倒だからな・・・」

何処か重い足取りで、青年はエリア6へと向かった。

案の定、ひらけた洞窟内にランポスが3体、残飯を漁っていた。

「無視してくれそうには無いな・・・・・」

ため息交じりで背中の長刀を抜いた。

竜刀【鮫牙】 切れ味こそ低いものの、その牙状に並んだ峰が、斬撃時の威力を飛躍的に上げることに成功した鉄刀【禊】と実力を二分する太刀

まずは先陣を切って飛び掛って来た一体目、すれ違い様に喉元へ一閃。

「グギャァァァ・・・・」

「…ん?」

斬った感じがいつもと違っていた、踏み込みが足りなかったのだろうか?まだ立ち上がって来る

一体目の影から奇襲をかけるように来た2体目、一体目同様紙一重で避け急所へ刃を突き立てる。

「ギャ・・グォォォ・・・」

「なっ!?」

踏み込みは完璧だった、刃を引く早さも申し分無い、しかしそれでもまだランポス達は息があった。

「これが街でのモンスターの強さってことか・・・」

街では数多くのハンター達が日夜狩りに精を出している

当然、モンスター達は狩られてばかりでは絶滅は確実である

そこで街付近のモンスターはより強い個体を残そうとして

村とは比べ物にならない程強くなっている事は広く知られている



「でもこの程度なら・・・行ける!!!」

刃を翻し、残る三体目に目を向けた、

・・・・・・・はずであった。



「・・・・え?」



そこに居たのは・・・・・・緑色の体色・・・・背中に生える無数の棘・・・・・大きな翼爪が目を引く翼・・・・・

そしてその口元には・・・・・・青いはずの鱗が真っ赤に染まり、すでに息は無い屍が一つ・・・・



飛竜【リオレイア】がそこにいた。


第4章

ただひたすらに走っていた・・・・



ただ一つだけの感情がロンの足を急がせていた・・・・・



「怖い怖い怖い怖い!!!」

ただそれだけが頭の中を駆け巡っていた・・・・・

どこをどう走ったのかは分からない・・・・

段差から飛び降りたのかもしれない、脚が痛む

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

草陰に身を隠し辺りを窺う、追ってきてはいないようだ。

「なんなんだよアイツは・・・」



屍を銜えた竜、リオレイアは襲ってくる気配は無かった・・・・

ただその目は突き刺すようにロンを睨み付け、こう語っていた

「次はお前だ・・・・」

飛び去る竜をろくに見もせず、ロンは走り出していた・・・・・



「ここは・・・・エリア9か?」

落ち着きを取り戻し、辺りをまた見回した。細長い道の先には泉が湧いており、モスが水を飲んでいた。

ここから先に行けば崖からエリア1に戻れる、エリア1に入ってしまえばベースキャンプまでは目と鼻の先だ

逃げ出すどさくさで何とか一本、特産キノコを採取出来ていた。

「もう帰ろう・・・・依頼は完遂したも同然だ・・・・」

ロンが立ち上がり一歩踏み出した。

「・・・あれ?」

2歩目が前に出ない、脚は痛かったが折れてはいないはずだ。

「ははっ・・・何やってんだろ、もう終わったんだよ・・・」

また一歩踏み出す、しかし2歩目がどうしても前に出ない。

(何なんだよ・・・この感じ・・・・・あんな奴相手に出来る訳無いだろ?

それでもその脚は動かなかった・・・・・

「・・・・・狩りたい・・・・・・アイツを・・・・・」

ロンの脚がやっと動いた、しかしその行き先はキャンプでは無かった。



「アイツを狩ってやる・・・待っていろ!!」






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